BBS - デアイ

 朔には、彼らがどこから現れたのか分からなかった。
 自分の意識が朦朧としている所為もあっただろう。だが、それだけではないと思う。
 何故なら、一瞬前まで周りには誰もいなかったのに、彼等はすぐ目の前に現れたのだから。
 でも、今の朔に驚くほどの余力はない。
 ただ、どうして? と思った。
 次の瞬間、視界が回る。
 背中に痛みを覚え、そして重さを感じた。
 痛みに顔を歪めるが、何とか耐えて目を開く。
 仰向けに倒れた朔に、一人の男が馬乗りになっていた。
 その顔が凶悪な笑みを浮かべる。
「鬼ごっこはお終いだぜ? お嬢さん」
 暴れる力も無い朔は、ただ嫌悪をあらわに顔を歪ませた。
 だが、男は気にした風も無く笑ったままで後ろの方を振り仰いだ。
 その視線の先には、もう一人の男がいる。
「なあ、お前本当にいいのか? 俺独り占めしちまうぜ?」
「いいって言ってるだろ?」
 木に寄りかかりながらつまらなそうな表情で立っている男はうんざりした口調で答えた。
「俺は上の連中を敵に回したくないし、権力にもそれほど興味ない」
 それに、と嘲笑を含んだ笑みを浮かべ、朔を見た。
「俺は面食いなんだよ。そんな平凡な女じゃその気にならない」
「そうか? 俺は不細工じゃなきゃいけるけどな」
 そうして二人は笑う。
 その声を聞きながら、朔は怒りが湧き上がってくるのを感じた。
 息が整ってきて、それくらいの余裕が出てきたようだ。