(平凡な女とか、不細工じゃなきゃいけるとか、ふざけるんじゃないわよ!)
確かに朔は美人でも不細工でもない。良くも悪くも平凡だった。
朔自身、それを否定しようとは思っていない。
だが、男達の方が襲ってきたのだ。それでこの言い分となれば腹も立つというもの。
体はまだ自由に動けるほどではないが、心だけは彼等を殴り飛ばす位の気持ちでいた。
「まあ、それならそれで安心だ。こんなレアな女、独り占め出来るなんて運が良いぜ」
馬乗りになっている男は、そう言って朔に視線を戻す。
その顔を見て、朔は体を強張らせた。腹を立てていたことも途端に忘れる。
男は、
(逃げ……なきゃ……)
思うが、体は動かない。
力尽きているというのもあるが、恐怖で体が固まってしまっていた。
「あ……ぅあ……」
喉も引きつり、拒絶の言葉を発することも出来ない。
見開いた目に、涙が溜まっていた。
「そんなに怖がるなよ」
下卑た笑いそのままで、男は朔の耳元に顔を寄せる。
息がかかり、嫌悪から目蓋をぎゅっと閉じた。
そして囁かれた言葉に絶望する。
「一緒に楽しもうぜぇ」
そう言った唇が、首筋に触れた。
もう駄目だと朔は思った。
自分を助けてくれる人なんて一人もいない。自分で何とか出来なければ、もうそこで終わり。
今も、この男達から逃げられなかった時点で終わりなのだ。
そう諦めたとき――。
ゴッ!
「ぅがっ!」
鈍い衝撃音と、男の声。そして重さが無くなった。
予想外の出来事に驚いて目を開けると、朔に馬乗りになっていたはずの男はもう一人の男の足元でうずくまっている。
そして朔の近くには、見覚えのない男が一人立っていた。