キィン
目の前を何かが飛び、金属音が響く。
死、以外のものが訪れるとは思わなかった朔は、ただ目を見開き呆然とする。
何が起こったのか。
良くは分からなかったが、今目の前にある光景は朔を死に至らしめるようなものではなかった。
先程の何かが朔と男――里桃と名乗ったか――の間を通り金属音が鳴ると、里桃は後方に飛びのいた。
そして次の瞬間、朔の目の前に二人の人影が現れる。
さっきの男達ではない。それと比べるとあまりに小柄だ。
「姫様、こいつ相手はちょっと……かーなーりキツイっす」
「そんなこと百も承知よ! でも放っておくわけにはいかないでしょう!?」
朔を守るように里桃と相対する二人。
一人は黒眼黒髪の可愛い少年。
もう一人は、朔と同じ胡桃色の髪をした和服姿の美少女だった。
(誰……?)
見覚えのない二人。
朔を背に里桃と相対して庇ってくれている。
(助けて、くれたの……?)
信じられなかった。
ずっと自分を助けてくれる人がいるとは思っていなかった。
さっき助けてくれたと思った里桃も、実際は助けたつもりなど無く、それどころか命を狙ってきた。……やっぱり助けてくれる人なんていないと思った。
助けてと言ったが、それは本当に誰かが助けてくれると思っていたわけではない。なのに……。
目の前の二つの背中は、どう見ても自分を守ろうとしてくれている。
(どうして……)
疑問というより、ただただ不思議だった。
そんな朔に、美少女が顔だけ向けてくる。
肩までの髪はさらさらで、愛らしい目が特徴的な美少女。
「大丈夫……なわけないか。でも安心して、私達が守るから」
と、強い意志が込められた目で微笑む。
「姫様、そういう格好良い台詞はオレに言わせて下さいよー」
続けて前を向いたままの少年が緊張感の無い口調で抗議した。
そんな二人に朔は戸惑う。
守ると言われたことなど無い朔にとって、それは馴染みの無いもの。言われるはずの無いもの。
それを笑顔ではっきりと言ってのけた美少女への対応の仕方が分からなかった。
それにこの状況で緊張感の無い様子の少年も謎だ。
だって、里桃はまだ刀を銀に輝かせこちらを睨んでいるのだから。
「何だ? お前らは」
張りつめた空気を
思いがけず現れた