――女とは貴重だのう。
――しかしよう今まで見つからなかったもんじゃ。
――仕方あるまい。子供のうちはよう分からんからの。
ひそひそと、少し離れた場所でしわがれた声が聞こえる。
これは夢だろうか。見たことも無い場所に自分は横になっている様だ。
――じゃがこれでますます安泰じゃ。髪の色を見たか?
――もちろんじゃ。あの色、良い血筋の証。
まどろんでいる朔は、声の内容を理解することは出来ない。
ただ、声色から喜びが伝わるのみ。
――さぞ強い子を産んでくれそうじゃ。
――まだ若いからの、姫様とともに沢山子を産んでもらおうぞ。
しわがれた声が笑う。
その
スッと、襖の開く音で目が覚める。
衣擦れの音が横になっている朔の枕元で止まり、そこに誰かが座りこんだ。
誰なのか確認するために、朔はゆっくりと目蓋を上げる。
「あ、ごめんなさい。起しちゃった?」
すると、声量を抑えた声が降りかかる。
夢の中で聞いた様なしわがれた声ではなく、若々しい女の声。
「でも丁度良かったかな。そろそろ夕食時だし」
(……夕食?)
目が覚めていきなり夕食とはどういうことだろうと疑問に思い、そのときやっと部屋の中が薄暗いことに気付く。
瞬間、気を失う前の記憶が頭の中を駆け巡り朔はがばりと起き上がった。
「うわっ!?」
突然起き上がった所為だろう。少女は驚きの声を上げ起き上がった朔にぶつからないよう避ける。
「あ、ご、ごめんなさい」
反射的に謝り、朔は少女を改めて見た。
暗がりでも分かる胡桃色の髪と美しい造形の顔。大きめの目は、少女らしいあどけなさを僅かに残しているかのようだ。
その少女は、里桃から助けてくれた二人のうちの一人。
「ちょっと待ってて。今電気点けるから」
そう言った彼女は立ち上がり、慣れた足取りで壁にあるスイッチを押す。するとすぐに蛍光灯が点き朔と美少女の姿を照らした。
そうして自分が白い着物下着に着替えさせられていることに気付く。
眠っているうちに誰かが着替えさたのだろう。着ていた制服はボロボロだったから。
知らぬうちにされた行為に少々恥ずかしさを覚えつつも、助けてくれた上に気を失った自分を見捨てないでくれた美少女に感謝し顔を上げた。
そうして見た彼女はやはり美しかった。
明るくなりよりはっきり見えるようになって改めて思う。
今は可愛いと言う方がしっくりくるが、もう数年もすれば美人になる。それを確信出来るほどの美しさが少女にはあった。
「えっと、とりあえず自己紹介かな」
そう言った美少女はもう一度朔の側に座る。
朝に見たのとは違う