「『あの人達』って、誰のことだい?」
「達ってことは、里桃では無いわよね? あいつ一人だったもの」
 突然様子が変わった二人に朔は思い切り動揺した。
 何かおかしなことを言ったのだろうか。
 確かに自分を襲ってきた男二人は華が助けに来る前に里桃によって追い払われた。華が見ていないのは当然だ。
 知らない者、知らないことに対して疑問を持つのは当然なのかも知れないが、二人の表情はそれだけにしては真剣過ぎる。
 どうしてなのか聞きたくなったが、先程もう質問はしないと誓ったばかりだ。
 朔は疑問を押し込め、ただ二人の質問に答える。
「え、と……。あの、里桃と出会う前に二人の男の人達に絡まれたんです。その人達が私の名前を聞いて『月の名前か』って言っていたので……」
「他には? その人達、他に何か言っていなかった?」
 さらに聞いてくる華に朔は記憶を辿る。
 絡まれた後に色々有り過ぎたから、思い出すのに苦労した。
「えーと……。月の奴は珍しいとか……。血の力を増幅させるとか……」
 確か、そんなことを言っていた。聞こえていても意味が分からなかったので部分的にしか覚えていないが。
 二人は朔の言葉を口内で繰り返し、互いに顔を見合わせていた。
(どうしたんだろう……?)
 その様子がやはり気になったが、大人しく二人の言葉を待つ。
 二人は神妙な顔で頷き合って、そろって朔を見た。
 先に口を開いたのは玉兎。
「……尚更、君にはこの家に来てもらった方がいいみたいだね」
 どうしてですか? と聞きそうになった唇を引き結ぶ。
 だが、言っても言わなくても説明はしてくれたようだ。すぐに華が玉兎の言葉に続いた。
「朔、そいつらは多分火鬼の一族の者だわ。貴女が大人になって気配が分かるようになったから、様子を見に来たのね」
 先程聞いた、この日本に元から居たという鬼。
(人間じゃ、なかったんだ……)
 思えば、山で再び遭遇したとき奇妙な現れ方をした。
 だから鬼だと聞いてある意味納得する。
 鬼の力というのがどういうものなのかは分からないが、あの人達が人間ではないということはすんなり受け入れられた。
「子供のうちは気配が曖昧で分からないのだけれど、大人になるとはっきり気配が分かるようになるの。私もそれで様子を見に行ったのよ? こんな近くにこんな強い気配を持つ鬼が居たなんて知らなかったから」
 そこまで話した華は、一度息をつき真面目な顔で口を開いた。
「月鬼も火鬼も女は貴重なの。しかも月鬼の女が産んだ子供は強い力を宿すなんて言われてるせいか、他の鬼からも狙われやすいわ」
 親が子に教えるように、優しく……だがしっかりと言葉を放つ。
 華の繊細な手が、いつの間にか拳を握っていた朔の手を優しく包みこむ。
「でも大丈夫。私達が貴女を守るから。貴女を、火鬼にも、里桃にも渡さないから……」
 その頬笑みは、彼女の手のぬくもりと同じくらい温かかった。
 華の肩越しには、彼女と同じ頬笑みの玉兎の姿。
 その頬笑みが、その言葉が、その温もりが朔の孤独という氷を溶かしてくれる。
 溶けた氷は雫となって頬を伝う。
 言葉では言い表せないくらい嬉しかった。
 それでも言わずにはいられなくて、喜びで震える唇を動かした。
「本当に、有難う御座います……」





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