ゆっくり足を踏み入れながら、部屋を見回した。
 部屋自体は小さめの道場という感じ。
 とはいっても、竹刀だとか何かしらの道具は何もない。
 それだけ言うと殺風景といった様子だが、この部屋にその言葉はどうしても合いそうに無い。
「凄い壁……」
 見惚れるように、朔は呟いた。
 その道場の壁には、全て絵が描かれていたから……。
 まるで古代エジプトの壁画のように、月鬼達の何らかの物事が描かれている。
 どうしてそれが分かったのかと言うと、それらの中に月から地上へと降りていく人達が描かれていたから。それは、昨日華と玉兎に話して聞かせて貰った事柄と同じだった。
 だが、一番驚いたのは壁画よりも、その壁画に描かれた“人”だった。
 人の形ではあるが、その額に角と思われる突起がある。
 そして、髪と目が地球上のどの国にもない色彩をしていた。
 髪は白――いや、銀色。
 そして目の色は黄色に見えるが、少し淡い。
「驚いた? この壁画、何か分かるかしら?」
 いつの間にか朔の隣に来ていた華が、少し笑い混じりに聞いてくる。
「月鬼の壁画……よね? でも、この“人”達は……」
「やっぱり不思議? でもね、これが本来の月鬼の姿なのよ?」
「本来の姿?」
 そう口にしながら、朔は改めて壁画を見る。
 良く見ると、壁の端の方には髪と目が茶色で描かれている人がいた。いや、正確には赤子。
 銀髪に淡黄たんこうの目の女性の腕に抱かれている。
「月降りし鬼、地の人と交わりその姿と色を失う」
 華が朔と同じ方に視線を向けて話し出す。
「最後の壁画とともに伝えられている言葉よ。月に居たころ、銀の髪と淡黄の目を持っていた鬼は地上に降りてその地の人々と交わることでその元の姿と色を失ったと言われているわ」
(……交わるってことは、混血が産まれたってことよね? 血が混ざって、その姿と色を持つ鬼が徐々に減って行ったということかな?)
 華の話にそう答えを出す。間違ってはいないだろう。
「それでも、初めのころは力を使うと銀髪淡黄眼の鬼に変転することが出来ていたらしいわ。今ではもう変転出来るものは無く、かろうじて元の色に近い色――胡桃色の髪に茶色の瞳をもつものが産まれるばかり」
(胡桃色の髪に茶色の瞳……)
 話の後半に僅かに反応する。
 その色は、華や玉兎、そして朔の色と同じだったから。
 そう言えば、昨日華は自分のことを力の強い鬼と言った。そして先程玉兎は血が強いと……。
 もしかすると、この髪と瞳の色が血の濃い鬼――力の強い鬼の証なのかもしれない。
 だとしたら、自分も強い力を扱えるのかもしれない。女鬼は結界を張るというから、より強い結界を。
「と、そろそろ本題に入りましょうか」
 朔の思いを察したかのように、華は壁画から視線を外して言った。





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