秋も終りで、美しく彩られていた木々も次々と葉を散らせている。
 遠くの山も色褪せ、風が冷たくなってきた。
 だが、今日は日差しが強い所為か室内はむしろ暖かい。
(ね、眠い……)
 ポカポカとした日差しを浴びながら授業を受けていた朔は、意識が途切れそうになるのを必死にこらえていた。
 今はまだ二時限目。
 こんな朝のうちから眠くなるとは……。
(やっぱり昨日あまり考えないでさっさと寝れば良かったかも……)
 昨日、結局玉兎の質問に答えることは出来なかった。
 いつまでも答えられないでいた朔に、玉兎は追及することなくただ「もう寝なさい」とだけ言い部屋まで送ってくれた。
 朔は自分の母親の名前が望ということを、何故玉兎に告げられなかったのか分からなかった。
 布団に入った後も理由を考えていると、次第に他のことも色々と気になり考え始める。
 両親は何故自分が鬼だということを教えてくれなかったのか。
 それとも教えてはくれたが、自分がおさな過ぎて覚えていないだけなのだろうか。
 大体両親はどちらも鬼だったのだろうか。
 確かに写真で見る母は胡桃色の髪と茶の瞳で自分と同じ色をしていた。自分が鬼であることを考えても、母はやはり鬼なのだろう。
 では父は?
 写真の父は黒髪黒目だった。
 父の兄である伯父は紛れもなく人間なのだから、父は人間だろう。
 そう言えば昼に華が聞かせてくれた話では、彼女の父の妻になるはずだった少女は人間の男と逃げたと言っていた。……その人間の男が父だとすると辻褄が合う。
 やはり玉兎の言うとおり彼の父の妻になるはずだった人と自分の母は同一人物なのだろう。
 そう考えるとやはり何故玉兎に返事をすることが出来なかったのか理由が分からない。
 玉兎の言っていることは正しいのだから、“はい”と言ってしまえばいいことだ。事実を口にするだけなのだから問題は無いはず。
 ……そうして朔は暗い天井を見つめながら延々と考えていたのだ。
 気付いたらいつの間にか寝ていたが、目覚ましが鳴って起きたとき寝足りない気分だった。
 そして案の定、授業中に机に座ったまま船を漕ぐ羽目になっている。
 起きてい続けることに必死で授業など全く身に入らなかった。
 それでも何とか二時限目も耐えきる。
 授業が終わり、先生が教室を出ていくとホッとしてそのまま机に突っ伏して寝たい気分になった。
 だが次は移動教室だ。今寝たら絶対このまま教室で寝過ごす自信がある。
(そうだ……)
 朦朧とする頭で良い考えを思いついた。
(早く次の教室に行って、そこで寝よう。みんなが集まってきて騒がしくなれば流石に気付いて目を覚ますだろうし)
 基本真面目な朔にとって、“サボる”という選択肢は無い。とにかく授業とは受けなければいけないものと認識していた。
 身に入らなければ意味は無いのだが、今の朔にはそこまで考える余裕は無かった。
 良案と信じて疑わない朔は嬉々として次の授業の教材を準備し、急いで立ち上がる。
 そして数歩進んだまでは良かったが、三歩程のところで突然目の前が揺れた。
 それと同時に頭の天辺から足元まで一気に背筋を伝って何かが下りていく感覚。
 あ、と思った次の瞬間には、朔は意識を失っていた。





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