朔の返事も待たず涼の手が動く。
 ブラウスのボタンが外されていき、白い肌が露わになった。
「っ! 嫌っ!」
 空気が肌に直接触れ、やっと朔は拒絶の言葉を発する。
 身体は恐怖でカタカタと震え、それがせめてもの抵抗の意志だった。
 だが、言葉だけの抵抗など意味は成さない。涼の手は拒絶の言葉など聞こえていないかのように朔の柔肌に触れる。
「い、いやぁ……」
 やがて抵抗の意志も恐怖に押され、言葉は弱々しいものになる。声が震えないようにすることが精一杯だった。
 そんな朔の様子に涼はフッと満足気に笑い口を開く。
「安心しろよ。そのうち抵抗しようなんて思わなくなる」
 涼の目が優しげに細められた。だが、朔にとってはそんな柔らかな表情すら恐怖の対象にしかならない。
 そして案の定、続けられた言葉は優しさとは反対のもの。
「言っただろ? 色々教えてやるって。こっちの方も俺好みに教え込んでやるよ」
 楽しげに笑う涼。そんな彼の顔が涙で歪む。
 今度こそ、朔の目から涙が零れ落ちた。
 もう、自分の力ではどうにも出来ない。
 例えもう一度結界が成功したところで手首を縛られているので逃げられない。
 自分を守るように結界を張ればいいのだろうが、出来る自信は無い。実際さっきのだってまぐれの様なものだった。
 保健室の先生が帰って来れば流石に助けてくれるだろうが、今が何時なのかも分からないし先生はいつ戻って来るかは言わなかった。当てには出来ない。
 打つ手は無いと、そう思ってから一人の男の顔が浮かんだ。
 学校にいる間いつも守ってくれている、少年と見紛みまごう同い年の男子――月人。
(……駄目)
 彼に助けを求めようと、思う前に打ち消した。
 叫べば助けに来てくれるのかも知れない。身体能力の高い彼は耳も人よりいい。三階と一階で離れていても、大声で叫べば聞こえるだろう。
 だが、朔は彼の名を呼べなかった。
 里桃に殺されそうになった月人の姿がまだ鮮明に頭の中に残っている。あのような光景はもう二度と見たくは無かった。
 今相対しているのは里桃ではないが、先程の身体能力を見ても涼が里桃に近い強さを持っていることは予測出来る。
 あの日の光景がまた繰り広げられる可能性は高かった。
 だから呼べない。月人を死なせたくなかったから。
「……大人しくなったな?」
 静かに涙を流しながら嫌悪に耐えていると、涼が挑発するような笑みを浮かべ囁いた。
「まあ、その方が乱暴な真似しなくて済んでいいけどな。……俺は基本紳士だからよ」
 どこがだ! と突っ込みたかった。会っていきなりベッドに組み敷く男のどこが紳士なのか。
 それに、両手を拘束しておいて乱暴な真似をしていないとは……。確かに暴力を振るう様な事はしていないが、拘束するのは十分乱暴な真似ではないのだろうか。
 朔は流す涙も忘れ声を上げようと口を開く。
 だが、涼の掌が脚を撫でたため発しようとした言葉が喉の奥で凍りついた。
 その手がゆっくり登って来る。スカートの中に入って来て、朔は思わず息を飲み目を瞠った。
 身体が強張る。
 月人を呼べないとなると後はもう本当に打つ手は無い。
 これから起こる事は、耐えなければいけないということだ。
 朔はその覚悟をしようとし、それが無理なことだと思い知る。
(好きでもない人とだなんて、耐えられるわけない!)
 そして、無駄であると分かってはいるが暴れようとする。そうでもしなければこの恐怖にすら耐えられそうになかった。
 だが、暴れる前に涼の手がピタリと止まる。
 それと同時に、チリン、と鈴の音が聞こえた。





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