黒い双眸そうぼうは冷めた色で朔の目を見る。
 視線が交わり、一瞬心臓に冷たい針を刺されたような感じがした。
 それほど彼の目は冷たくめている。
 だが、その氷のような冷たい眼差しも彼の美貌を際立たせる一つとなっていた。
 雪女という妖怪がいたら、こんな人なのかもしれないと朔は思った。――彼は男だが……。
 その氷妖ひょうようの男が、形のいい唇を開く。
「お前もさっさと出て行け。不法侵入だぞ」
「は……?」
 三拍ほど、何を言われているのか分からなかった。
 彼は助けてくれたのではないのか?
 こんなとき、真っ先に言う言葉は 『大丈夫か?』等気遣いの言葉ではないのか。
 他人に助けられたことのない朔はよく分からなかったが、少なくとも邪険に扱われるとは思わなかった。
 男は呆然として動こうとしない朔に、あからさまに顔をしかめる。
「聞こえないのか? さっさと出て行けと言ったんだ」
 同じ言葉をもう一度聞いて、朔はやっと理解した。
 彼は朔を助けたつもりなどない。
 先程男達に言ったように、自分の土地で好き勝手されたくないだけなのだ。
 理解した朔は何とも言えない気分になる。
(呆れたというか……何というか……)
 奇妙な脱力感を覚えた。
 そんな様子で未だに動かない朔に、男は不機嫌を通り越して怒り始める。
「いい加減立て。蹴られたいのか?」
 仮にも女に対して何て事を言うのだろう。
 だが、その言葉に本気を感じる。このまま立ち上がろうとしなければ本当に蹴られると思った。
 朔は仕方なく立ち上がろうと起き上がる。
 が、意識はしっかりしてきたが体はそうでもなかったらしい。――足に力が入らなかった。
「っあ、っと……」
 足がふらつき、男の方に倒れこむ。
 避けられるかと思ったが、男の方も倒れてくるのは予測していなかったようで反射的に抱きとめてくれた。
「……おい」
 抱きとめ支えてくれはしたものの、男にとってそれは不本意な行為。声にはあからさまに怒気が表れている。
「ご、ごめんなさい!」
 申し訳ないというより、ただ男が怖くて離れようとした。――そのとき。
 チリン……
 どこからか鈴の音が聞こえてきた。
 何かに覆われているのかその音は少しくぐもっている。
「まさか……」
 男が呟き、学ランのポケットから何かを取り出す。
 それは一円玉くらいの鈴だった。





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